堺の包丁の歴史を追求:伝統産業会館の探訪

堺 和包丁 伝統産業

進取の精神が息づく堺が育んだ文化の一つに包丁があります。
有名な堺打刃物(さかいうちはもの)は、世界に誇るクラフト文化です。
堺伝統産業会館へ行き、包丁のことを調べてきました。

とにかく恐ろしい種類の包丁やはさみ、刃物類が展示されてあり、日本一だと思います。
堺を案内するには、まず最初にこの伝統産業会館からスタートするといいでしょう。

堺伝統産業会館
刃物ミュージアム

目次

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堺伝統産業会館へのアクセス

  • 堺市堺区材木町西1丁1-30
  • 開館時間 10:00~17:00
  • 休館日 年末年始(12/29~1/3) その他臨時休業有り
  • 入館料 無料
  • 電話 072-227-1001
  • FAX    072-227-5006

堺打刃物(さかいうちはもの)の歴史

  1. 堺は日本の夜明けの舞台となった町で、今から約2000年前、弥生時代には既に集落が営まれ、石包丁が使われていました。祖先が始めて道具として使ったのが刃物だと言われています。
  2. 世界遺産となった世界最大の古墳、仁徳天皇陵の造営は、想像を絶する壮大な土木工事だったと思われます。工事用の鍬(くわ)鋤(すき)などの工具がたくさん生産され、職人が集落を作っていきました。
  3. 16世紀、ポルトガル人によって鉄砲タバコが伝来しました。国内でタバコの葉が栽培されるようになると、その葉を刻む「タバコ包丁」が大量に必要となりました。優れた切れ味の堺打刃物は、広く認められ求められました。
  4. 種子島に伝わった鉄砲の製法を橘屋又三郎などが堺に伝えてから、堺は日本一の鉄砲生産地となり、戦国時代に重要な役割を果たしました。堺には、鉄砲鍛冶屋敷が今も残っていて有形文化財に指定されています。
  5. 徳川幕府「タバコ包丁」を幕府の専売品に認定し、「堺極」の刻印が全国に名を馳せていきました。たばこの葉を刻む包丁は、今ではほとんど必要とされていませんが、当時は切れ味が高く評価されました。 堺打刃物のルーツは、「タバコ包丁」で、産業としての発展の基礎もこの時期に確立しました。
  6. 古くから「食道楽」大阪の料理人とともに歩んできました。料理を生かす切れ味を追求して生まれた伝統の逸品、堺包丁は他にない大阪堺ならではの伝統産業です。
  7. 21世紀を迎えた現在でも、多方面の料理人から絶大な信頼と支持を得て、不動のブランド力を誇っています。一般家庭には、あまり知れ渡っていませんが、プロの料理人の約90%の方が堺の包丁を使っています。
    インターネットでいろんな情報を得れる時代になり、海外から、わざわざ堺の包丁を買う目的で来日する観光客が増えています。

堺 包丁

堺打刃物の製造工程

堺包丁の製造工程は、大きく分けて3工程あります。
それぞれの職人が専門の技術を持って生産する分業制となっています。
一つ一つが手間と熟練した技術を要する工程となっています。

鍛冶 鉄から包丁を生みだす作業。火の力を使い鉄を鍛造し、おおまかな形をつくる。

研ぎ 鍛冶屋からあがってきた包丁の形のものを、研いで刃を付ける。

柄付け 柄を製造する。

鍛冶

地金に粘りを持たせて欠けにくいにする堺包丁独自の鋳造技術です。
日本は、地下資源に乏しく、昔から刃物の材料になる鉄も少なかったため、鋼を薄く打ち伸ばす鍛冶の技術が発達しました。

文字ではわかりにくいので、下部の動画が参考になると思います。

  1. 刃金つけ 
    地金(軟鉄)と刃金(鋼)を接着する。 赤く熱した地金をたたき、硝酸、硝砂、酸化鉄などで接着剤をつけた刃金とを合わせ、炉に入れて熱し、火造りしていく。
  2. 先つけ 
    火造りした材料を動力ハンマーでたたきながらだいたいの包丁の形を整えていく。たたいていくうちに 地金と刃金をなじませ、のばす。ほぼ形になったらたがねをいれて切り落とす。
  3. 中子とり
    再び炉に入れて熱し、ハンマーで整形する。たたきのばしながら柄になる部分を形づくる。整形できた包丁をわらしのなかにいれ、灰になる過程で徐々に熱をさます。(焼きなまし)
  4. 裏すき 
    熱をさました包丁の表面の酸化被膜をハンマーでたたいてはがし、動力ハンマーで荒たたきをする。その後、グラインダーで裏(鋼がついている側)研磨し、くぼませる。このくぼみにより、刃の逃げができて物が切れる。
  5. 断ち回し
    さらにハンマーで全体をたたき、ならしていく。この行程により、包丁が鍛えたれ、鉄が打ちしめられると同時にひずみやゆがみを取る。 たたきのばされた包丁を形に合わせ余分を立ち落とす 。
  6. 刻印打ち
    ゆがみひずみを取った後、裏に刻印を打つ、そして全体をグラインダーで仕上る。すり廻された包丁を再度ハンマーでねじれなどの修正 をする。
  7. 焼入れ
    油部分や汚れを取り、焼むらをおさえるため泥を塗る。その後、炉の余熱で乾かし、780~800℃に加熱。そして、一気に水につけて熱を取る。この時、泥を塗ってあることで大きな泡ができず、すばやく均等に焼入れすることが可能になる。焼入れにより刃金の硬度が高まる。
  8. 焼きもどし
    さめた包丁を再び炉に入れ熱し、水滴をたらしてその走り具合で温度をみる。技術と経験を要する高度なテクニックである。近年では160~ 180℃の温度管理ができる機械による焼きもどしが普及している。これにより刃金に粘りができかけにくい刃ができる

(たがね、chisel)とは、金属や岩石を加工するための工具の一種。鋼鉄製で、一般的につち(ハンマー)とともに用いる。たがね とひらがなで表記されることが多い。漢字では鏨と書く。
金属を加工する場合、削る作業つまりいわゆる「はつり」に用いたり、金属版を切断したり、凹凸をつけたり、やすりの刃を形成するためなどに用いる。岩石を加工する場合は、それを削ったり割ったりするために用いる。

研ぎ

鍛冶工程で、包丁の形にした物を、普段見ている包丁の状態にまでしていきます。とても大切な工程で熟練した技術が必要とされます。

  1. 荒研ぎ
    木製の形に包丁をはめ、鉄のハンドルを利用したてこの応用により粗い目の回転砥石で全体を粗く研ぐ。刃先の肉を落としていき、角度を決める。木の台の上で、ゆがみを整調する。
  2. 平研ぎ
    また木製にはめ、包丁の平面を研ぎ進め厚さを決める。砥石でついた荒い目を、バフをあてて細かくしていく。金床の上でタガネをいれ、ゆがみをとって、均等に砥石が当たるように修正していく。
  3. 本研ぎ
    包丁の刃先を研ぎ、刃をつけていく。刃ひきしめながら仮の刃をつけておき再度、ゆがみをならす。
  4. 裏研ぎ
    鍛冶ですいた裏をさらに研いできちんとした形にくぼみを整える。バフを当てて目を細かくし、刃をさらにうすく研ぐ。(刃あて)さらに120番、220番のバフで目を細かくしていく。
  5. 木研あて
    木製の回転木研で「目」をとおしていく。金鋼砂を包丁に塗りつけ、木研にあて、きめ細かな裏面にする。その後、ゆがみを修正し、しのぎ筋を際立たせる為、型枠にはめしのぎ筋にそって木片でねりつける。
  6. ぼかし
    砥石の粉をねって泥状になったものをゴム片につけて切刃の部分をこする。これにより軟鉄の部分がくもり、刃金部分は、さらにつやが出て刃紋(刃境)がくっきり浮き出る。そして最後に目の細かい砥石で刃先を研ぎ上げ、かえりなどをとり仕上げる。

柄付け

  1. 中子を温める(和包丁の中子とは普段は柄に隠れていて見えませんがハンドルを差し込んでいる部分です)
    包丁の中子をバーナーで赤くなるまで温めます。
  2. 中子を柄に刺す
    十分に温めた中子を包丁の柄に差し込みます。
  3. 柄の底を叩く
    柄の底を叩くことで包丁が中に入っていきます。
  4. 歪を確認する
    刺した包丁が左右上下に歪んでいないか確認をして、正しい位置に調整します。
  5. 包丁に名前を入れる
    全ての工程が終われば包丁に、タガネと金づちで名前を入れます。

一般的な包丁の種類

和包丁は用途によって200ほどの種類があります。プロの方たちはそれらを使い分け、目指す味を作り出しています。

ここでは、一般的な包丁の種類と使い分けを説明します。

牛刀

肉、野菜、魚(骨以外)を牛刀1本で何でも切ることが出来ます。料理人の間で最も使いやすく、必ず一本は持っている包丁です。サイズは刃渡りが180mmから360mmまであり自分に合ったサイズを選ぶことが出来ます。

出刃包丁

出刃包丁は魚を三枚におろしたり、さばくための包丁です。魚の骨を切るために刃の背が厚くなっています。魚の骨や鳥の骨などを切る時はかならず出刃包丁をご使用ください。
この出刃包丁は堺で生まれ、名前の由来は出っ歯の職人が作ったため、出刃包丁となったと言われています。

刺身包丁(柳葉包丁)

刺身包丁は刺身を引くのに適しています。角が立った美味しい刺身を引くには、刃渡りが必要になるため刺身包丁は基本的に細長い形状をしています。

薄刃包丁・菜切包丁

野菜用の包丁で、名の通り薄い刃を意味しています。まな板の上で刻み物をするときに大きくストロークを取りやすい。薄刃包丁は、片刃なので右利き用と左利き用があります。
菜切包丁は両刃なので、利き腕の区別がありません。

ペティナイフ

果物の皮むきやカッティング、また細工包丁等としても使われる包丁で、1本あると助かります。
他にもたくさんの種類の専門的な包丁があります。
ハサミも同じく秀逸な品が多く、華道用植木用、洋裁和裁用にと、その道のプロに選ばれてきています。

堺 包丁

堺 包丁

堺 包丁

堺打刃物の人気の理由とブランド力

なぜ、プロの料理人の90%もの人たちに支持されているのでしょうか。

日本列島は周囲が海に囲まれていたため、肉よりも魚や野菜を中心とした食文化に適合した「和包丁」作りが発達しました。
例えば「刺身」は新鮮な魚介類を調理するため、食材の細胞を壊さずに、ゆっくりと手前に引いて切ります。「和包丁」の特徴は片刃で、刃の付いていない方へ切れ込んでいくので、食材の細胞を押しつぶさず、薄く綺麗に角が立ち、鮮やかな切り口で美しく仕上がります。味や食感などを損ないません。

また、日本には四季があり、その時期にしか味わえない旬のものを食べるという習慣もあります。
春夏秋冬それぞれの食材を色鮮やかに食卓に並べるため、様々な種類の「和包丁」が必要とされました。

切れ味はトマトを切れば判る。

トマトを切ると、本来なら切り口から水分があふれるはず。良い包丁で切るとほとんどこぼれず、凝縮されたうま味が、口の中だけで広がります。切れない包丁で切った素材との味の違いが驚くほど体感できます。

また、人参でスープを作ったとしましょう。
切れない包丁は、素材をつぶして切っているので断面はギザギザ。これでスープを作ると断面のギザギザ部分が煮え過ぎで水っぽくなります。
一方、切れ味のよい包丁で切った素材の断面に被膜のできた野菜は、素材本来の味をその中に閉じ込めます。スープを作ると驚くほど素材の味が引き出されます。
堺打刃物の伝道師 ビヨン・ハイバーグさん    https://www.loft.co.jp/kotokiji/detail.php?id=46879

野菜の切り口の細胞を壊さないことによって、例えば野菜サラダなどでは、ドレッシング液が過度に切り口から浸透しないで美味しくいただけます。

海外からの客に対応できる人気店

堺打刃物、和包丁の伝道師 カナダ人ビヨン・ハイバーグさんのお店が大人気!
堺打刃物の魅力を世界に発信して、行列のできるお店となり、多くのマスコミにも取り上げられています。

堺打刃物の工房紹介

後継者が少なくなってきていた堺打刃物の工房ですが、最近は、若い後継者が育ってきています。


日本食
ユネスコ世界無形文化遺産として認定されましたが、その背景には、伝統の和包丁と共に研鑽を重ねてきた歴史があります。
さらに広く国内外に堺打刃物の素晴らしさが広まることを願っています。

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